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甲状腺機能亢進症

甲状腺の働きと調節

甲状腺は、胃や心臓のような体にある臓器の一つで内分泌器官に属します。

内分泌とは、内分泌器官からホルモンといわれる物質が分泌され、

ホルモンが血流に乗り全身に行き渡り、

そのホルモンを必要とする細胞(標的器官)にある受容体に結合して

その作用を発揮するシステムのことす。

甲状腺は前頚部に位置して甲状腺ホルモンを分泌しています。

甲状腺ホルモンは、海藻などの食物に含まれているヨードを材料として合成され、

それぞれの細胞の新陳代謝を刺激したり促進したりする作用があります。

換言すると、体が円滑に活動し成長するためになくてはならないホルモンと言えます。


甲状腺機能亢進症


甲状腺から甲状腺ホルモンが多量に分泌され、全身の代謝が高まる病気です。

バセドウ病とは、この病気を報告したドイツの医師の名前に由来するもので、

米国や英国では別の医師の名前をとってグレーブス病と呼んでいます。


原因は何か

血液中に抗TSHレセプター抗体(TRAb)ができることが原因です。

自己抗体とは自己組織に対する抗体で、

自己抗体により引き起こされる病気は自己免疫疾患と言われ、

甲状腺疾患はその代表的なものです。

自己免疫疾患は他の自己免疫疾患を合併しやすいことも注意が必要です。


この抗体は、甲状腺の機能を調節している甲状腺刺激ホルモン(TSH)

というホルモンの情報の受け手であるTSHレセプターに対する抗体です。

これが甲状腺を無制限に刺激するので、

甲状腺ホルモンが過剰につくられて機能亢進症が起こります。
 

このTRAbができる原因はまだ詳細にはわかっていませんが、

甲状腺の病気は家族に同じ病気の人が多いことでもわかるように、

遺伝的素因が関係しています。
 

症状の現れ方

甲状腺ホルモンが過剰になると全身の代謝が亢進するので、

食欲が出てよく食べるのに体重が減り(高齢になると体重減少だけ)、

暑がりになり、全身に汗をかくようになります

精神
的には興奮して活発になるわりにまとまりがなく、疲れやすくなり、

動悸(どうき)を1日中感じるようになります。

手が震えて字が書きにくくなり、ひどくなると足や全身が震えるようになります。

イライラして怒りっぽくなり、排便の回数が増えます

大きさに差はありますが、ほとんどの症例で軟らかいびまん性の甲状腺腫が認められます。
 

眼球が突出するとよくいわれますが、実際には5人に1人くらいです。
 

検査と診断

甲状腺ホルモン(遊離チロキシン:FT4)と甲状腺刺激ホルモン(TSH)を測定することで、診断できます。

さらにバセドウ病であることを確認するには、

原因物質である抗TSHレセプター抗体(TRAb)を測定します。

治療の方法

抗甲状腺薬治療、

手術、

アイソトープ治療の3種類がありますが、

通常、抗甲状腺薬治療をまず行います。
 

抗甲状腺薬(チアマゾール、プロピルチオウラシル)は甲状腺ホルモンの合成を抑える薬です。

この薬で合成を抑えると、4週間くらいで甲状腺ホルモンが下がり始め、

2カ月もすると正常になって、自覚症状はなくなり、完全に治ったようになります。

しかし、原因のTRAbが消えるのは2~3年後なので、

TRAbが陽性の間は抗甲状腺薬をのみ続ける必要があります。


いつまでもTRAbが陰性にならない時は、

甲状腺を一部残して切除する甲状腺亜全摘(あぜんてき)出術をするか、

放射性ヨードを投与して甲状腺を壊すアイソトープ治療をすることになります。

このどちらを選ぶかは、甲状腺の大きさや年齢、妊娠の希望などを考慮して決定します。

 

甲状腺機能亢進症(バセドウ病)の放射性ヨード治療とは?

 

  • 海藻にはヨードと呼ばれる栄養素がたくさん含まれています。
  •  
  • 食事から入ったヨードは甲状腺に集まり、そこで甲状腺ホルモンが作られています。
  •  
  • 放射性ヨードも食事のヨードと同じ性質をもっているので、
  •  
  • 薬として服用すれば同じように甲状腺に集まります。
  •  
  • しかし放射性ヨードと食事中のヨードの違いは、
  •  
  • 放射性ヨードがベータ線と呼ばれる特殊な放射線を出すことです。
  •  
  • これが甲状腺を部分的に破壊し、ホルモン合成を抑える働きをします。
  •  
  • これがヨード治療の原理です。
  •  
  • 放射性ヨードのほとんどの放射線は甲状腺が受けます。


服用した放射性ヨードはどうなりますか

  • 放射性ヨードは、ほとんどが甲状腺に集まり、一時的に身体の中に残ります。
  •  
  • 一方、甲状腺に取り込まれなかった放射性ヨードは、
  •  
  • 最初の1日間でほとんどが尿中に排泄されます。
  •  
  • 身体の中の放射性ヨードはしだいに減っていき、
  •  
  • 治療が終わったときには身体の中には放射能は残っていません。


治療前にどのような準備が必要ですか

  • 検査の2週間前からヨードを含まない食事(禁ヨード食)が必要です。

    ヨード制限中に食べてはいけない食品


    • ヨードは海藻類に多く含まれています。
    •  
    • 寒天・昆布だしなどの形で思いがけなく入っていることもありますので、
    •  
    • 食品の原材料表示を確認するよう心がけましょう。
      •  
      • すべての海藻類
        •  
        • 昆布、わかめ、海苔、ひじき、もずくなど
        •  
        • 昆布のだし汁
      •  
      • 海藻加工食品
        •  
        • 昆布茶、寒天、ところてん、おぼろこんぶ、海苔の入ったふりかけ、
        •  
        • 昆布の佃煮、こんにゃく(黒色、緑色)など
      •  
      • 昆布エキスを含んだ食品
        •  
        • 和風だし、だし入り味噌、めんつゆ、ドライカレーの素、
        •  
        • 昆布エキスを含むスポーツ飲料やお茶飲料など
      •  
      • 寒天を含んだ菓子類
        •  
        • ようかん、ゼリー、ヨーグルトなど
      •  
      • ヨードを添加した食品
        •  
        • ヨード卵など
      •  
      • カラギナンを含んだ食品(海藻由来の食品添加物のこと)
        •  
        • 豆乳、ドレッシング、ゼリー、プリンアイスクリームなど
        •  
    •  
    • 魚介類の中にもヨードが多く含まれています。
      •  
      • 赤身魚
        •  
        • まぐろ、さけ、ます、さわら(カジキマグロ)、ツナ缶詰、など
      •  
      • 青身魚
        •  
        • かつお、さば、あじ、さんま、にしん、いわし、ぶり、ふくらぎ、こぞくら、
        •  
        • はまちなど
        •  
        • かつお節(かつお節の出し汁は可)
      •  
      • 白身魚
        •  
        • たら、たらの練り製品(かまぼこ、ちくわ、ふかし、はんぺんなど)
      •  
      • 貝・えび
        •  
        • すべて
    •  
    • 動物の甲状腺ホルモンを含んでいると思われる食品も検査に影響を与える場合があります。
      •  
      • 動物の内臓など
        •  
        • レバー
  •  
  • ヨードを多く含むこんぶ、わかめ、のりなどの海藻類と、
  •  
  • そのだしや寒天などの加工食品を避けてください。
  •  
  • その後甲状腺のヨードの取り込み率と甲状腺の写真撮影(シンチグラフィ)をし、
  •  
  • ちょうど良い治療量を決めます。
  •  
  • なお、禁ヨード食は治療終了の1週間後まで続けてください。
  •  
  •  
  •  
  • 治療はどのようにしますか
  •  
  • 放射性ヨードが入ったカプセルを服用するだけです。
  •  
  • ヨードは微量であり、ヨード過敏症の人でも安心して治療できます。
  •  
  • 簡単な治療であり、副作用はありません。


       入院期間はどのくらいですか

  •  
  • バセドウ病の治療には通常4-8週の入院期間が必要です。
  •  
  • ただしこの期間は甲状腺機能亢進の症状の強さにより異なります。
  •  
  • ヨード治療のみを行なう場合は短期間の入院になることもあります。
  •  
  • いずれにせよ、甲状腺に集まらなかった放射性ヨードのほとんどが尿に排泄されるため、
  •  
  • 専用の治療病室に最低1日の入院が必要です。
  •  
  • 入院期間は状況により異なりますので、担当医と相談してください。

治療効果はどのように現われますか

  •  
  • 放射性ヨード治療の効果はゆっくり現われます。
  •  
  • 早ければ2週間くらいで機能が下がり始め、
  •  
  • 半年くらいまで徐々に甲状腺の働きが下がっていきます。
  •  
  • 甲状腺腫の大きさは、治療により縮小します。
  •  
  • これは抗甲状腺薬にみられない効果です。
  •  
  • この治療により甲状腺機能は確実に下がりますが、放射性ヨードの効果には個人差があります。

効き足りなければ?

  • 効き足りなければ放射性ヨードの再治療を行ないます。
  •  
  • あるいは少量の抗甲状腺剤を服用します。

効き過ぎれば?

  • 効き過ぎる場合には、甲状腺機能低下症になります。
  •  
  • このときは足りないホルモンを補うために、甲状腺ホルモンを生涯飲み続ける必要があります。
  •  
  • 一般に、甲状腺機能亢進症が確実に直る量の放射性ヨードを服用すると、
  •  
  • 機能低下の可能性は避けられません。
  •  
  • ただし、適量のホルモンを飲んでいれば副作用は全くなく、
  •  
  • 普通の人と同じように生活できます。
  •  
  • また、身体の管理も抗甲状腺薬を飲み続けるよりは容易です。


放射能により将来、癌になることはありませんか

  • その心配は全くありません。
  •  
  • 放射性ヨード治療はすでに長年にわたって行なわれており、安全性が確認されています。


家族
など周囲の人は放射線の影響を受けますか

  • 服用直後の入院だけで、実際上は問題がありません。
  •  
  • ただし、身体の中に残った放射性ヨードからはわずかの放射線がでます。
  •  
  • ごくわずかとはいえ、周囲の人に不要な放射線の影響を与えないため、
  •  
  • 最初の2、3日間だけ、トイレの後など良く手を洗うなど清潔にすることに御配慮ください。


治療後妊娠しても、赤ちゃんに影響はありませんか

  • 全く問題ありません。
  •  
  • 過去の治療経験からも、生まれた子供に奇形が多くなるなどの悪影響が出ることはありません。
  •  
  • ただし、治療後の半年間は、甲状腺機能のコントロールのため、妊娠を避けることが勧められます。


治療後の甲状腺機能および健康の管理はどのようにしたらよいですか

  • ヨード治療は安全な治療法です。
  •  
  • ただし、治療後の半年くらいは甲状腺機能が変化しますので、
  •  
  • その時の状態にあわせて対処する必要があります。
  •  
  • 仕事を軽減したり、休息が必要な場合もあります。
  •  
  • 放射性ヨード治療後は長期的に見て、甲状腺機能低下症が高率に発生します。
  •  
  • このため、一旦機能が正常化しても通院を中止することなく、経過観察を受けることが大切です。

なお、抗甲状腺薬は妊娠中でも医師の指示のもとに服用することができます。

バセドウ病は女性では100人に1人の頻度でみられる病気で、

決してまれなものではありません。

自覚症状がなくなっても治ったわけではなく、いつ薬をやめるか、

薬物治療以外の治療に切り替えるかなど難しい点もあるので、

できれば甲状腺専門医と相談しながら治療することをすすめます。