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食道裂孔ヘルニアとは

ヘルニア」(hernia)の意味は その一部もしくは全部が本来あるべきところになく、逸脱している状態をいいます。

 ヒトには胸部と腹部の間に横隔膜(おうかくまく)という隔壁(かくへき)があって、胸腔と腹腔を分けています。

胸腔と腹腔に連続している大動脈、大静脈、食道は、それぞれ横隔膜にある裂孔を通っています。

食道は、頸部から始まり胸部(正確には後縦隔〈こうじゅうかく〉)を通り、

腹腔(ふくくう)内に出たところで胃につながります。

したがって、食道・胃接合部は腹腔内に位置するのが本来の姿です。

その後縦隔から腹腔内への通じる孔(あな)を食道裂孔といいます。

つまり食道裂孔ヘルニアとは食道裂孔より胃の一部あるいは全部が後縦隔内へ脱出した状態をいいます。

重症例では胃の半分以上、時には全体が縦隔(じゅうかく)内に脱出することもあります。

胃の脱出の状況により次の3型に大別されます。

[1]滑脱(かつだつ)型(sliding type)

腹部食道、胃噴門(ふんもん)部、胃体上部が食道裂孔を通って後縦隔に脱出したもの。

食道・胃接合部は横隔膜(おうかくまく)より上方に移行している。

[2]傍(ぼう)食道型(paraesophageal type)

胃底部(いていぶ)のみが全周性に、食道裂孔から後縦隔へ脱出したもの。

食道・胃接合部は腹腔内にとどまっています。

[3]混合型

[1]と[2]の混合型。

原因としては、  横隔食道靱帯(じんたい)、横隔膜食道裂孔右脚(うきゃく)などの胃 噴門部固定機構

(胃から食道への逆流を防止する役目を担っている)の異常によることが主です。

生まれつき食道裂孔が緩く胃が脱出している先天性の食道裂孔ヘルニアの症例もあります。

成人に発生する大部分の成因は後天性であり、加齢による横隔食道靱帯の脆弱(ぜいじゃく)化、

横隔膜下脂肪組織の退行 変性、肥満、脊柱後彎(せきちゅうこうわん)などに加え、

喘息(ぜんそく)や慢性気管支炎などの慢性の咳嗽性(がいそうせい)疾患、老人性肺気腫(きしゅ)、

嘔吐など腹圧上昇の機転が加わることが誘因となって発生すると考えられます。

症状

本症の約20%は無症状との報告があるようです。

食道裂孔ヘルニアがあるだけで自覚症状がなければ、単にヘルニア状態にあるだけで問題となりません。

自覚症状や逆流性食道炎を合併して初めて、“ヘルニア症”ともいうべき病態を呈します。

また、 重篤(じゅうとく)な合併症を起こすまで自覚されないこともあります。

主な症状としては、げっぷ、胸やけ、上腹部の腹満感、逆流感、胸部でのつっかえ感、

嚥下(えんげ)時のしみる感じ、 嚥下障害、胸骨後部の圧迫感・疼痛(とうつう)・

灼熱(しゃくねつ)感などがあります。

時に狭心症の発作との鑑別が必要になるほど胸痛が強いこともあります。

症状をとくに強く自覚するのは夜間就眠時(とくに明けがた)、かがんで草取りなどしている時、

食後しばらくした時、酒・たばこ・コーヒー・ココア・チョコレート・油ものなどを摂った時などです。

診断

1)胸部単純X線検査

胃のガス像の位置、心陰影に重なるガス像の有無などをみます。こういった所見を認めた場合は、

診断は比較的容易につきます。

2)上部消化管造影検査

通常はバリウムを使います。

食道の長さ・胃の位置などを確認します。

同時にバリウムの通過の状態もチェックします。

また体位変換によって、胃から食道への逆流の有無も確認できます。

3)内視鏡検査

本症の診断には必要不可欠な検査といっていいでしょう。

食道胃接合部の位置の直接的な確認、食道裂孔の弛緩(しかん)の有無の確認

(典型的な内視鏡像を示します)ができます。

診断のみならず、合併することの多い食道炎(逆流性食道炎)の程度の診断や

潰瘍(食道や脱出胃にみられる)・ バレット(Barrett)食道・食道ガン・胃ガンなど他の疾患との

鑑別診断にも有用な検査といえます。

4)心電図

虚血性(きょけつせい)心疾患との鑑別および合併の有無の確認のため必要です。

5)この疾患には、胆石症や大腸 憩室(けいしつ)を合併することが多い

(これら3つをSaintの3 主徴〈さんしゅちょう〉という)ため、検査しておいてもいいと思います。

治療の方法
 

 形態的変化であるため、治療は外科的手術になります。

脱出している胃を腹腔内に引きもどし、開大している食道裂孔を縫縮し、逆流防止手術を追加します。

食道のまわりに胃底部を全周性に巻きつけるニッセン法、亜全周性のトペー法、ドール法、

噴門(ふんもん)部を正中弓状靭帯(じんたい)に縫合するヒル法などがあります。

最近では腹腔鏡下にニッセン法が行われています。



<逆流防止手術:胃の上部を襟巻き状に食道に縫い付ける> <襟巻き状の噴門形成術が終わったところ>

小さな手術創ゆえ患者さんへの負担が軽くて済みます。

食道裂孔ヘルニアに気づいたらどうする

 

つかえ感や胸やけ・胸痛があったら消化器科に受診して、上部消化管造影と内視鏡の検査を受けるとよいでしょう。

食道裂孔ヘルニアが軽ければ、とくに治療の必要はありません。

逆流性食道炎があればH2受容体拮抗(きっこう)薬やプロトンポンプ阻害薬を服用します。

傍食道型食道裂孔ヘルニアは原則的に手術を行う必要があります。

食道裂孔ヘルニアも、程度と逆流性食道炎の合併により手術の対象となります。