山口県岩国市尾津町1-12-29
074_telephone 0827-34-0303
 
あなたは 3294204 番目の訪問者様です

« | »

B型慢性肝炎治療薬のエンテカビル

B型慢性肝炎治療薬エンテカビル水和物(商品名:バラクルード)は、

ヌクレオシド(核酸)系逆転写酵素阻害作用を有する抗ウイルス薬であり、

B型肝炎ウイルスHBV)の増殖を抑制する経口製剤である。

HBVの主たる感染経路は母子間感染であるが、

その約9割は自然経過によりHBVが減少し、健康人キャリアとなる。

しかし残りの1割ほどでは、長期間炎症が持続するB型慢性肝炎が発症する。

慢性肝炎からは年率約2%で肝硬変へと進展し、肝硬変からは年率約3%で肝癌が発生することが知られており、

B型慢性肝炎の治療においては、HBVを排除し肝炎を鎮静化させることが最終目標となる。

近年、ワクチンが広く使用されるようになったことで新規HBVキャリアの発生は大きく減少しているが、

現時点でもわが国のHBVキャリアは100万人以上いると推定されている。

B型慢性肝炎の治療には、インターフェロン療法、ステロイド離脱療法などがあるが、

近年では抗ウイルス療法が積極的に行われるようになっている。

この抗ウイルス療法に使用される薬剤(核酸アナログ製剤)としては、

2000年11月に発売されたラミブジン(商品名:ゼフックス)と、

2004年12月に発売されたアデホビルピボキシル(商品名:ヘプセラ)があり、

エンテカビルはわが国では3番目の核酸アナログ製剤となる。

エンテカビルの最大の特徴は、その高い抗ウイルス効果である。

最近発表された第3相二重盲検試験結果(N Engl J Med 2006;354:1001-1010)によれば、

エンテカビルは、ラミブジンに比べて有意に治療効果が高く、安全性は同等で、

エンテカビル耐性のHBVの出現は認められなかったと報告されている。

ただしエンテカビルでは、類薬で乳酸アシドーシスや肝障害といった重大な副作用が報告されているほか、

頭痛、倦怠感、上気道感染症、鼻咽頭炎、上腹部痛、下痢
などの副作用も報告されているので、注意が必要である。

また、エンテカビルは小児における有効性と安全性は確立されていないため、

16歳未満の小児患者には原則して使用しない。

なお、投与予定患者には、エンテカビルの有効性を確実にするために、

空腹時(食後2時間以降かつ次の食事の2時間以上前)に服用するように指導する必要がある。

B型肝炎の治療は、大きく分けて、抗ウイルス療法インターフェロン(IFN)療法、エンテカビル治療、

ラミブジン治療、ラミブジンアデホビル治療)、肝庇護療法免疫療法(ステロイドリバウンド療法など)があります。

B型急性肝炎の場合は、一般に肝庇護療法により、ほとんどの人は治癒します。

しかし、B型急性肝炎を発症した人では、劇症肝炎になり死亡する危険性もまれにあるため注意が必要です。

B型慢性肝炎の場合は、ウイルスを体から排除することはほぼ不可能で、

治療の目的は「ウイルスの増殖を低下させ、肝炎を沈静化させること」となります。

しかし、B型慢性肝炎を発症したからといって必ずしもすぐに治療を始めなければならないというわけではありません。

なぜなら治療をしなくても自然にセロコンバージョンが起こって肝炎が沈静化することが期待できる事例もあるからです。

 

セロコンバージョン

抗原陽性から抗体陽性に転換することを、セロコンバージョンと呼ぶ。

B型肝炎ウイルス(HBV)に感染しB型肝炎を発症すると、

HBVの活動が活発であることを示すHBe抗原が陽性となり、

このときHBe抗体は陰性である。

その後、肝炎が沈静化すると、HBe抗原はやがて陰性となり、

HBe抗体が陽性となる。
           
セロコンバージョンとは、HBVが排除されたのではなく、

免疫機構によりその活動性が抑えられている状態である。

セロコンバージョンがB型慢性肝炎の治療の目標のひとつになっている

が、セロコンバージョンが起きた後もHBVが増殖を続け、

肝炎が進行する人がいることが明らかとなっている。

治療開始の判断は、年齢(35歳を境目とする)、ウイルス量、炎症や線維化の程度などを評価し、決定していきます。

その結果、セロコンバージョンが起こる可能性が低く、肝硬変へ進行する可能性が高い場合、

基本的には、肝炎の進行度が新犬山分類で

F2あるいはA2以上の場合に治療が検討されます。

このように、“肝臓の状態”を正しく見極めることが治療法を決めるのに重要です。

抗ウイルス療法と肝庇護療法

B型慢性肝炎、35歳未満の場合

自然経過でセロコンバージョンが起きることが期待でき、また治療中の妊娠に対する影響を考慮して、

基本的には経過観察が行われます。

しかし数ヵ月間の経過観察を行っても、セロコンバージョンが起きず、

肝炎が活動性である場合は治療が検討されます。

治療法としては、インターフェロン療法、ステロイドリバウンド療法が行われます。

エンテカビルやラミブジンなどの内服の抗ウイルス剤はウイルスそのものを死滅させる薬ではなく、

ウイルスが増えるのを抑えておく薬ですので、中止をする時期を決めるのが困難です。

そのため内服を始めると、長期間服用する必要が生じることが多くなります。

そこで、エンテカビル、ラミブジンは胎児への影響が懸念されているため、

妊娠(を望む)可能性のあるこの年代ではなるべく使用を避けます。

またラミブジン治療を長期間行うと、ラミブジンの効かないウイルス(ラミブジン耐性株)の出現が問題となるため、

急性増悪による肝予備能の低下、重症あるいは劇症肝炎の場合を除きなるべく使用を控えます。

35歳未満でHBe抗原陰性(-)ならびに肝機能に特別な異常がなければ、経過観察を続けます。

B型慢性肝炎、35歳以上の場合

セロコンバージョンが起こる可能性が低く、肝硬変へ進行する可能性が高い場合、

エンテカビルあるいはラミブジン治療を行い、肝機能の正常化、HBV増殖抑制を目指し、

肝硬変肝がんへの進行を阻止します。

しかし、ラミブジン治療を長期間行うと、ラミブジン耐性株が高頻度に出現し肝炎が再び起きる事例が多く、

その場合にはアデホビル治療の追加、あるいはエンテカビル治療への変更が検討されます。

エンテカビルの抗ウイルス作用は高く、ラミブジンを1とすると、約1,500という薬理試験の結果が得られています。

エンテカビルの効かないウイルス(エンテカビル耐性株)の出現も低いとされています。

また、ラミブジン耐性株に対しても効果があります。

以下に慢性肝炎の治療方針を示します。

B型慢性肝炎の治療ガイドライン

治療対象は、ALT≧31IU/Lで
HBe抗原陽性は、HBV DNA 5logコピー/mL以上
HBe抗原陰性は、HBV DNA 4logコピー/mL以上
肝硬変では、HBV DNA 3logコピー/mL以上

  HBVDNA ≧7 log コピー/mL  <7 log コピー/mL
35歳
未満
HBe抗原陽性 1.Peg-IFNα2a(48週)またはIFN長期投与(24〜48週)
2.Sequential療法
3.エンテカビル
1.Peg-IFNα2a(48週)またはIFN長期投与(24〜48週)
2.エンテカビル
HBe抗原陰性 1.Sequential療法
2.エンテカビル
1.経過観察、またはエンテカビル
2.Peg-IFNα2a(48週)
血小板15万未満またはF2以上の進行例には最初からエンテカビル
35歳
以上
HBe抗原陽性 1.エンテカビル
2.Sequential療法
1.エンテカビル
2.Peg-IFNα2a(48週)またはIFN長期投与(24〜48週)
HBe抗原陰性 1.エンテカビル
2.Peg-IFNα2a(48週)
1.エンテカビル
2.Peg-IFNα2a(48週)

現在、ラミブジン投与中B型慢性肝炎患者に対する
核酸アナログ製剤治療ガイドライン

HBVDNA   治療法
<2.1 log
コピー/mL持続*
  原則エンテカビル0.5mg/日に切り替え
≧2.1 log
コピー/mL
VBT**なし エンテカビル0.5mg/日に切り替え可
VBTあり アデホビル10mg/日併用

*持続期間は、6ヵ月を目安とする

**VBT:viral breakthrough(HBV-DNA量が最低値より1logコピー/mL以上の上昇)

厚生労働省研究班による平成24年「B型慢性肝炎の治療ガイドライン」より抜粋

現在、多くの慢性肝炎に対する治療法が存在しています。

基本的には上記の治療方針にそって治療が検討されますが、B型肝炎は経過の個人差が大きいため、

必ずしもこの限りではありません。

医師とよく相談をし、納得をした上で治療方針を決めていくことが大切です。
 

新犬山分類

線維化の程度 壊死・炎症所見の程度
F0:線維化なし
F1:門脈域の線維性拡大
F2:線維性架橋形成
F3:小葉のひずみを伴う線維性架橋形成
F4:肝硬変
            
 
A0:壊死・炎症所見なし
A1:軽度の壊死・炎症所見
A2:中等度の壊死・炎症所見
A3:高度の壊死・炎症所見