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胃悪性リンパ腫

胃の悪性リンパ腫とはどのような病気なのでしょうか。

リンパ組織ががん化した悪性腫瘍

男性に多く、胃での発生は6割

悪性リンパ腫は、リンパ組織から発生した腫瘍で、免疫細胞が増殖して腫瘍を形成する悪性腫瘍をいいます。

このうち、全身のリンパ節が腫瘍化したものを「ホジキン病」、

主に胃や大腸に腫瘍細胞ができるものを「非ホジキン病」といいます。

そして胃の悪性リンパ腫は、リンパ球ががん化した悪性腫瘍で、

全身のリンパ節が腫れたり、臓器に腫瘍ができたりします。

50~60歳代の男性に多く見られ、発生部位としては胃、小腸、大腸が挙げられます。

そのうち、最も多いのは胃で、約6割を占めています。

MALTリンパ腫(low grade B-cell lymphoma of MALT type)


胃原発MALTリンパ腫は,悪性度の低いリンパ腫として知られており、

病巣が多発し広範囲に及ぶ傾向にあるため,胃全摘術が選択されていましたが、

リンパ節転移の頻度は決して低いわけではなく,時に脾門部リンパ節を含む2群リンパ節

(『胃癌取扱い規約』第13版)までの転移が観察されています。

それでも,Type I,すなわち,MALT リンパ腫成分のみからなる腫瘍の

外科的切除による治療成績はきわめて良好でした。

 

しかし,現在ではHelicobacter pylori の除菌療法が胃原発MALTリンパ腫の治療の第一選択であり,

多くの場合,一定の時間をかけて病変は退縮します。


もともとHelicobacter pylori 陰性である場合や,除菌療法に対する不応例に対しては

これ以外の治療が必要となりますが,放射線療法や化学療法が有効な場合もあります。

MALTリンパ腫はびらん状の浅い病変が主体であり,

非外科的療法の合併症として重篤な出血や穿孔をきたす可能性はきわめて低いことから,

安易に手術療法,すなわち胃全摘術を選択することは避けることが望ましいと思われます。


ピロリ菌の除菌で腫瘍小さく

胃カメラでは、(1)腫瘍浸潤型 (2)腫瘍形成型 (3)広範浸潤型 

(4)浅い潰瘍型(早期胃がん型)のタイプを見極めることができます。

胃に発生する悪性リンパ腫には二つの形態があります。

一つは低悪性度の「胃MALTリンパ腫」で、B細胞リンパ腫の一種です。

ヘリコバクター・ピロリ菌が関与しているといわれ、まずは除菌療法を行い、

腫瘍が小さくなるかどうか経過を見なければなりません。

びまん性大細胞B 細胞性リンパ腫(diffuse large B-cell lymphoma;DLBCL)

化学療法と放射線治療が効果あり

もう一つは、高悪性度の「びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)」で、

小腸、大腸に発生するリンパ腫の中で、最も多いリンパ腫です。

胃カメラで組織を採取しただけでは悪性かどうか分かりづらい場合が多く、

手術後に初めて悪性リンパ腫と診断されることがあるので注意が必要です。

手術と化学療法または放射線治療を行います。

化学療法や放射線療法は、感受性が高いので、予後に期待がもてる治療法と考えられます。

血液・腫瘍内科を受診して

悪性リンパ腫の疑いがある場合は、血液・腫瘍内科の専門医によく相談した上で、

手術や抗がん剤治療を受けられることをお勧めします。

Lugano 国際会議で作成された消化管悪性リンパ腫の臨床病期分類

これまでわが国では,胃リンパ腫を胃癌と同様に局所的な疾患として取り扱い,

外科切除できるものは手術するという考え方で治療されてきた歴史があり,

現在でも胃リンパ腫の治療として外科切除を第一選択とする施設もありますが、

最近では,胃リンパ腫の治療は,化学療法や放射線治療など,非外科的な治療法が主体となってきています。

胃原発悪性リンパ腫は多彩な内視鏡所見を呈し、肉眼所見のみならず,

病理組織学的所見においても癌との鑑別が問題となる場合があります。

また,MALTリンパ腫とDLBCLの組織像がしばしば混在する点には注意が必要です。

原病死のみをイベントとして作成した生存曲線をみると,

Type Iは全例生存中であるのに対し,

Type IIからType IVにかけてはDLBCL 成分が多いほど早期に再発していますが,

長期にわたる観察の結果としては,どれもほぼ同じ生存率を示していました(図1)。

すなわち,DLBCL 成分の有無が予後を分ける可能性が示唆されています。

1)進行期(Lugano 分類でⅡ2 期以上)

DLBCL は進行期であっても治癒が望める悪性腫瘍であり,全身性の DLBCL と考え,

手術や放射線治療のような局所療法単独治療は行わない。

現在では,成人の全年齢層において

抗 CD20 モノクローナル抗体(リツキシマブ)併用 CHOP

(シクロホスファミド,ドキソルビシン,ビンクリスチン,プレドニゾロン)療法(R-CHOP 療法),

6~8コースが基本的な標準治療である。


 


2)限局期(Lugano 分類で病期Ⅱ1 期まで)

手術後化学療法3~4コースの治療群と化学療法単独群の治療成績は変わらないという報告もあるが,

手術した場合と化学療法放射線併用し,胃を温存した場合の全生存は変わらないため,

現在では手術の適応は穿孔や止血困難な出血がある場合などに限られている。

胃原発を含む限局期 DLBCL は,巨大腫瘤病変や予後不良因子(61歳以上,病期 Ⅱ期,血清 LDH 高値,PS2 以上)

を認めない限局期において CHOP 療法3コース後放射線治療群と CHOP 療法8コース群を比較した結果,

CHOP 療法後放射線治療群は5年の無増悪生存率が77%,全生存率が82%と

CHOP 療法単独群より有意に優れていたため
 
CHOP 療法3コース後放射線治療群が予後不良因子のない標準治療となった。

しかし,① 長期間のフォローアップをすると CHOP 療法 3コース+放射線治療群で

晩期再発が多い傾向がみられる,

② CHOP 療法8コース終了後放射線治療(30Gy)の有無で比較した臨床試験で,

放射線治療追加群は無病生存期間の延長や局所コントロールは可能になるが全生存期間は変わらない,

60歳以上のリスク因子のない患者では CHOP 療法 4コースと CHOP 療法 4コース実施後放射線治療(40Gy)群

との無作為比較試験の結果で全生存期間は変わらないなどの報告があり,

放射線治療の位置づけはやや不明瞭とも考えられる。

ただし,対象患者が少し異なることや長期間のフォローが完全でないことなどから

現時点で放射線治療が不要と結論づけることはできない。 

 
限局期胃 DLBCL のような予後良好群に R-CHOP 療法を行うことで,

さらに治療成績を改善させられるかが議論されてきたが,

(1)前述したように進行期DLBCLの標準治療は R-CHOP 療法であることと,

(2)主に限局期 DLBCL を対象とした臨床試験(MInT study)において IPI=0 の低リスク群においても

リツキシマブ併用化学療法が化学療法単独に比べてすぐれた結果を示していること,

(3)historical control との比較で,preliminary なデータであるが,

限局期 DLBCL 全体では R-CHOP 療法+放射線治療の成績が CHOP 療法+放射線治療より良好なため,

実際は RCHOP 療法+放射線治療が行われることが多い。

そのため,現在の治療方針として NCCN のガイドラインでは,

① 前述の予後不良因子がない場合は R-CHOP 療法3コース後放射線治療,

② 予後不良因子がある場合は R-CHOP 療法 6~8コースもしくは R-CHOP 療法3コース後放射線治療

が推奨されるとなっているが,PET を用いた治療効果判定基準が提唱されており,

今後化学療法後放射線治療の対象となる患者は減少するかもしれない。

また,胃腫瘤の大きさと治療方法の選択にコンセンサスのある明確な基準はないが,

参考として NCCN ガイドラインでは10cm以上の巨大腫瘤病変がある場合は
 
R-CHOP 療法6~8コース後放射線治療が推奨されるとなっている。

一方で,DLBCL は放射線や抗癌剤に対する感受性が高く,

放射線療法と化学療法(R-CHOP療法)の組み合わせで治療されており,

胃原発であるばかりに例外と考える理由はない。

胃原発DLBCLはしばしば巨大な腫瘍像を呈し,化学療法による出血や穿孔を危惧する見解もあったが,

そのリスクはきわめて高いとはいえず,

とくに欧米では胃切除術を行うことそのものの生命リスクとの兼ね合いがあるので,問題視されていない。

その一方で,胃が温存されることでの術後の食生活,QOLにおける価値は大きいといえる。

 

StageⅠ-Ⅱ1 の DLBCL については,胃癌に準じた D2 郭清を伴う胃切除術を行うことにより,

手術単独による治療でも90%程度の5年生存率を得ることができるとの報告がある。

しかし,再発は5年を過ぎてもみられている。

外科的切除後の再発の特徴は遠隔のリンパ組織に再発している点である。

DLBCL は一般に放射線治療と化学療法の組み合わせで治療されているが,手術は局所療法であり,

強いていえば放射線治療に置き換わるものである。

したがって,何らかの理由で照射を避け,外科治療を行った場合には,化学療法を追加しない限り,

標準療法と同等とはいえない。

反面,化学療法を行わない場合でも,胃癌に準じた手術を行うことにより,治癒の可能性は残される。

一方,治療不応例に対しては,外科治療で根治を求める立場から,

胃癌に準じたリンパ節郭清を伴う根治的な手術を行うことになる。

占居部位や腫瘍の大きさゆえに胃全摘が必要となる可能性が高い。

しかし、胃全摘を受けた直後の患者にとって,CHOP 療法は相当厳しい治療である。
 

 

胃原発悪性リンパ腫は主にMALT リンパ腫とDLBCL に分かれ,

前者は除菌療法,後者は放射線療法と化学療法が第一選択である。

しかし,両方の組織型が混在することも多く,その鑑別と治療,フォローアップには

同疾患の豊富な診療経験が役立つ場合がある。

手術療法は今や主流とはいえない。

胃原発悪性リンパ腫が疑われた場合には,経験豊富な内視鏡医,病理医,血液内科医の連携が必要となる。