山口県岩国市尾津町1-12-29
074_telephone 0827-34-0303
 
あなたは 4140203 番目の訪問者様です

«

ピロリ菌は絶対に除菌しなければいけないのか?

 

ピロリ菌は大きさが1000分の4mmとごく小さな、らせん状の細菌で、正式名称はヘリコバクター・ピロリといいます。国内の感染者は約3500万人と推察されており、主に幼少期に口から感染し、胃の粘膜にすみつくと考えられています。

ピロリ菌が胃の粘膜にすみつくと、胃の粘膜に炎症を引き起こし慢性胃炎の状態となり、加齢とともに徐々に胃炎が進行していき、日本人の場合多くは胃の粘膜が萎縮する萎縮性胃炎という状態となります。胃がんが発生するのは、ピロリ菌が感染して炎症をおこした胃粘膜からがほとんどであり、萎縮性胃炎が進行すると胃がん発生の危険性がより高まります。

ピロリ菌を除菌することで、胃の炎症が徐々に軽快し、萎縮性胃炎も改善する傾向があり、胃がんの発症が抑制できることが明らかにされています。

しかし、胃がんの主な原因がピロリ菌だから、ピロリ菌を除菌すればもう胃がんにはならいのでしょうか?それは誤解です。除菌で胃がん発生の危険性が下がることは確かですが、ゼロにはなりません。さらに、ピロリ菌除菌前の胃炎の状態が進んでいるほど除菌後も胃がんのリスクはより高く残ります。ピロリ菌がいなくなった時点で、すでに検査で発見できない極めて小さな潜在的ながんができてしまっていることなどがその原因と考えられています。

ピロリ菌の除菌により胃がんの発生や死亡率を減らす効果が期待される一方、除菌が成功して安心し、胃がん検診を受けなくなるケースがあり問題となっています。除菌が成功しても定期的な内視鏡(いわゆる胃カメラ検査)が必要で、特に萎縮性胃炎がある場合はより注意が必要です。日本の内視鏡の診断技術は高く、早期に胃がんがみつかれば胃がんで死亡する危険性は極めて低いことからも、ピロリ菌除菌後にも定期的に内視鏡をうけることが極めて重要です。

 

ピロリ菌の感染ルートはまだ解明されていませんが、感染について人体実験をした博士(イギリスのマーシャル博士)がいます。博士はピロリ菌が胃炎や胃潰瘍の原因と考え、自分でピロリ菌を飲んで病気になることを自分の体で証明しました。

ピロリ菌は幼少時いろいろなものを口に入れてしまう頃、衛生環境、特に飲み水などから入るようで、日本人では60歳以上で半分以上の人が、東南アジアで衛生環境が悪いとほとんどの人が感染してきました。幼児期に感染すると言われているのは、その時期の胃の中は酸性が弱く、ピロリ菌が生き延びやすいためです。幼児期の感染では母から子への家庭内感染が疑われていますので、大人から子供への食べ物の口移しなどには注意が必要です。

現在の日本では、約6,000万人の保菌者がいると言われています。年齢別に分析すると高齢者(団塊の世代前)の方は約80%前後の割合で感染し、若い世代の感染率は20%を切る程度です。高年齢の方の感染率が高いのは、上下水道が十分に整備されていない不衛生な環境で育ったことが原因と考えられています。上下水道などの生活インフラが整備された現代日本では、生水を飲んでピロリ菌に感染することはあまり考えられません。

予防方法

感染を予防する方法はよくわかっていません。しかし、人体実験により口から感染することは確認されていますので、親から子への食べ物の口移しには注意が必要でしょう。また、発展途上国で生活する際には非衛生的な水や食べ物に細心の注意を払い、できるだけ口にしないほうが感染のリスクは減るでしょう。今の日本の衛生環境で、大人が除菌後再感染する可能性は極めて低く、ほぼ無視できるレベルで心配することはありません。

最後に大変大切なことを2つお伝えいたします。

1つはピロリ菌を除菌すると、胃潰瘍、十二指腸潰瘍は単独での発症はほとんどなくなります。しかし、消炎鎮痛薬などで起こる胃潰瘍、十二指腸潰瘍は除菌しても完全には防げません。

ピロリ菌

2つ目はもっとも大切なことです。ピロリ菌は大きな胃がんの原因ではありますが、除菌するころにはすでにピロリ菌により慢性胃炎が起こっており、この慢性胃炎こそが胃がんの発生母体になっているのです。つまり発生母体はすでにできているのでピロリ菌を後から除菌しても胃がんの危険は減少しますが、決してゼロになりません。「ピロリ菌を除菌したから、もう胃がんの心配がない」と胃の検診をやめてしまうと大変なことになり得ますから、絶対に勘違いしないでください。除菌はあくまで胃がんのリスクを減らすだけで、除菌後も胃がんになる人はいます。除菌が成功した方でも医師と相談の上、定期的な検査を行うことが大切です。

 

ピロリ菌の除菌治療が成功すれば、もう心配ないのでしょうか?

潰瘍の再発は確実に少なくなりますし、胃がんの発生も少なくなることが十分期待されますが、0になるわけではありません。
胃についての検診は、引き続き継続することが勧められています。


除菌治療終了後、再感染に気をつけるために、観察期間は何年ほどとった方がよいのでしょうか?

本邦の成人においては、除菌治療成功後の再感染率は年間1%未満と報告されています。
除菌成功後の再感染は極めて稀で、再感染が起こる場合でも除菌後1年以上経過したからです。
除菌成功が正しく診断できれば、特別な除菌判定のための観察期間の設定は不要です。
なお、胃癌の早期発見のためには除菌成功1年後の内視鏡検査が推奨されています。


ピロリ感染胃炎の除菌成功後に、注意しなければならないことを教えてください。

除菌成功後にも胃癌が発見されることがあるので、除菌に成功した後も定期的な胃癌のスクリーニング検査は必要となります。
また、萎縮の強い症例や食道裂孔ヘルニアを合併している症例では、除菌後に胃食道逆流症(GERD)が出現することがあります。


除菌治療の適応年齢について、高齢者(たとえば80歳代)は除菌治療を行なう必要性があるのですか?

年齢のみで適応の有無を判断することはできません。
MALTリンパ腫であれば年齢に関わらず感染者は除菌治療するべきです。
胃癌予防の観点からであれば、80歳以上で腸上皮化生も伴う高度な胃粘膜萎縮がある場合は予防効果が少なく、さらに腎機能が悪い場合などは積極的に除菌を行う必要はないでしょう。
基礎疾患がなく、本人の希望がある場合には高齢であっても除菌治療を行ってよいでしょう。
また、お孫さんなどと接することが多い高齢者では感染源となりうるので、除菌治療を考慮した方がよいでしょう。


除菌成功患者が安易に胃癌にならないと思い込み、健診受診の件数が減る可能性もある。 学会として何かしらの啓蒙は考えているのですか?

除菌成功後にも定期的な内視鏡検査や胃がん検診を継続して実施することは極めて重要です。 このことは、除菌施行医が必ず患者に説明すべき事項です。
学会でも、消化器内科専門医のみならず、除菌治療を行う一般内科医に正しい知識を啓蒙するよう活動をしています。
また一般市民にも、新聞報道や市民公開講座を通じて、正しい知識の普及に努めています。


胃癌撲滅が目的であるならば、内視鏡検査を必須とせず、もっと手軽に若年者でも除菌できるようにすべきではないですか?

はい、その通りです。
現在、除菌治療を開始する前には上部消化管内視鏡検査を行い、ヘリコバクター・ピロリ感染胃炎の診断と、胃癌の除外が必要となっています。
若年者では胃癌の発生頻度は低いため、今後は「test&treat」、すなわち保険診療でまずピロリ菌感染の検査をして、その後除菌治療を行うのが理想です。
現在、公費を使用したこのような試みが市町村レベルで行われつつあります。

 

 

3.除菌後の胃癌どう考える?

 ――除菌が成功しても、胃癌を完全に防げるわけではないですね。

 残念ながら、そうです。胃癌発生が抑制できるのは、60歳代で2分の1、70歳代では3分の1くらい。若いうちの除菌で抑制率が高いのは、先ほども申し上げた通りです。つまり、除菌しても、未感染の状態と同等までに回復させることは難しい。事実は、「ピロリ菌感染者の10%ほどが胃癌を発症する」「除菌をすれば胃癌発症を3分の1に減らすことができる」にすぎないのです。

 そのような状況で、我々がなすべきことは、「除菌しても胃癌になる可能性がある」としっかり理解していただくこと。そして、1年から2年ごとに内視鏡検査でフォローすることです。除菌で安心してしまって、その後は何の検査も受けないのでは不十分。特に繰り返す潰瘍で悩んでいた方は、除菌後もきちんと検査を受けることをお勧めします。

 除菌後に発症する胃癌に関して、まだ分からないことが多いのですが、最近の報告では、「小さくて見つけにくい陥凹型を示すことが多い」のが特徴のようです。胃癌があれば、直ちに治療を受けていただくことになります。

ピロリ菌の除菌でやっぱり食道がんは増えている?

そして、どうやら逆流性食道炎による発がんが増え始めているようなのです。

この問題はメディアでもほとんど取り上げられていません。けれど上の図で分かる通り、増加傾向にあるのは明らかです。

もちろん、ここで増加した分がすべて、ピロリ菌の除菌によるものであるというわけではありません。除菌が爆発的に行われるようになったのは2013年以降なので、そこから逆流性食道炎になって発がんしたとしたら時間軸が合いませんから。

おそらく、「ピロリ菌感染の自然低下→逆流性食道炎の増加」が、腺がんの増加として反映されているのでしょう。

ただし、この増加分が除菌とは無関係だとしても、「逆流性食道炎になれば、日本人でも腺がんが増える」ということは読み取れます。つまり除菌によって逆流性食道炎になれば、タイムラグはあるものの、将来的に腺がんになるリスクが上がるだろうということです。

ここまで読み進めて、「医者に勧められるがままにピロリ菌の除菌をしたのに、どうしてくれるんだ!」と思った人もいるかもしれません。

患者数を比べてみると、現状では腺がんは食道がんの10分の1以下で、さらに食道がんが胃がんの5分の1程度です。腺がんを多く見積もったとしても、胃がんの50分の1ということになります。

つまり、胃がんのリスクを減らすことの方が、優先順位は高いのです。

もちろん、ピロリ菌を除菌したら自動的に逆流性食道炎になるわけでもありません。除菌によって胃酸が活発に分泌されるようになったとしても、あくまで本来あるべきレベルに近づくというだけです。

それが逆流するかどうかは、日頃の食生活の内容や量、肥満の程度などが大きく影響しています。適切な生活習慣が守られていれば、簡単には逆流しません。

その上でも、この問題については、医療者もやや不用意だったのかもしれないと自戒を込めて考えています。

除菌で胃酸が増えることに加え、ご飯がおいしくなり、体重増加から逆流性食道炎になってしまったという人が結構います。総合的に、ピロリ菌の除菌の必要性や妥当性は現状でも揺るぎませんが、除菌はしっかりとした生活習慣の指導とセットであるべきだったのでしょう。

さて、ではそのようなリスクをはらんだ逆流性食道炎になってしまったら、どうすれば良いでしょうか。

 

 

 

 

 

 

  • 「ピロリ菌を除去しても本当に大丈夫なの?」現場の医師に聞いてみた

    WHO (世界保健機構) の外部組織であるIARC (国際がん研究機関) は「ピロリ菌は胃がんの原因である」という報告を1994年に行いました。これは、「がんの原因が細菌感染であった」という画期的なものでした。
    日本は、先進国の中ではピロリ菌の感染率が高い。胃がんが多い要因にもなっています。
    つまり、除菌により感染率を下げれば、胃がんの死亡者数を減らすことができるのですが、海外からは懐疑的な意見もあります。
    なぜ、議論が生まれるのでしょうか?
    そして、私たちの胃の中にピロリ菌がいた場合、どのように対処するのが、最善なのでしょうか?
    本プロジェクトの発起人のひとりでもある、鈴木英雄医師(消化器内科)に、詳しいお話を聞きました。
         鈴木先生、こんにちは。
    鈴木 こんにちは。よろしくおねがいします。
         先生は、「ピロリ菌感染症認定医」で、胃がんになる前の、ピロリ菌に感染している患者のことも実体験として知っていると思いますが…。
    鈴木 はい。内視鏡をやっていると、ピロリ菌に感染しているかいないかは、すぐにわかるんです。ピロリ菌に感染している胃は、ヒダが厚くなっていたり粘液が多い。さらに長年感染している人は胃のヒダがなくなってきます。ピロリ菌に感染しても自覚症状は乏しいのですが、内視鏡で見ると、れっきとした病気だと思わされます。
         ですが、「自覚症状の無い人に、ピロリ菌を除去するのはやりすぎ」という議論もあるようです。ピロリ菌を除去することによるデメリットもあるという話も…。
    鈴木 たしかに、除菌薬によって副作用がおきたり、胃酸の分泌が回復して一時的に胸焼けがおきる人もいます。しかし、WHO (世界保健機構)は今から20年以上前の1994年に「ピロリ菌は胃がんの原因である」と認定し、2014年には「胃がん対策はピロリ菌除菌に重点を置くべきである」との発表を行っています。
        では、なぜ今も、「ピロリ菌は除去するべき」「しないべき」という議論が起こるのでしょうか?

    鈴木 まず、日本での潰瘍などを含む患者の平均7.8年の観察で、ピロリ菌陽性者からは約3%の人にがんが見つかりましたが、陰性者からは1例も見つかりませんでした。次に、「ピロリ菌陽性者に除菌すれば胃がんが減るか」という問いに答えるためには、「除菌する人」と「しない人」に分けて、長期間比較する必要があります。早期胃がんで内視鏡治療をした500人以上を対象に行った研究では除菌した人のほうが、その後の胃がん再発率が明らかに抑えられていました。胃がんや潰瘍のない人に関してはどうか、ということでは、以前国立がんセンターが研究を開始しましたが、症例が集まらずに中止になった経緯があります。
    しかも現在は、日本ではピロリ菌の除菌が保険で出来るようになっているので、同じような研究は不可能と言わざるを得ません。
         不可能、とはどういうことですか?
    医者から「あなたは胃がんの原因であるピロリ菌に感染しています。保険で除菌ができますが、除菌しないでこのまま胃がんが出来るかどうか、経過をみさせてください」と言われたら、いかがでしょうか?
         もちろん、断ります!
    鈴木 そうなりますよね。
    しかし、海外ではこのような研究が行われていたりします。中国のグループからの報告では3千人以上を対象にして、7年の経過を追ったところ、除菌した人のほうが胃がんの発生が抑えられていました。同じような研究は欧州や韓国でも進行中で、結果が待たれます。除菌しても意味がないというのは胃がん発生は減らせるかもしれないが、死亡率減少効果には結びつかない、というのが主だと思われます。しかし、海外の研究を基にしたデータをピロリ菌の菌種や食生活も異なり、早期胃がんの割合や治療効果が高い日本人に一概に当てはめることはできません。
    ピロリ菌感染率の低下から、長期的には日本から胃がんの発症は自然と減っていくでしょう。しかし、今現在ピロリ菌に感染していて、将来的に胃がんになるかもしれない人がまだ多数いる、ということが問題です。彼らが胃がんで命を落としてしまうことを考えると、「除菌によるデメリットの方が少ない」と私は考えています。
         なるほど‥‥。
    「ピロリ菌を除去することが、果たして完全によいことか?」は医学としては議論中であっても、今、先生が立ち上がるべきだと思ったのはなぜでしょう?
    鈴木 我々消化器内科医は、ピロリ菌感染で荒廃した何千人の胃を診て、除菌によって健康的な胃に戻ることを何度も経験しています。そして、胃がんで命を落とす何百人の患者さんと、そのご家族の涙も見ています。その時いつも感じるのは、「この人は除菌をしていれば、死なずに済んだのではないか‥‥?」という自問なのです。
         自分自身がピロリ菌に感染していた場合、お医者さんとどのようなコミュニケーションを取れば良いのでしょうか。
    鈴木 まず、大事なのはピロリ菌と胃がんの関係を知っていただきたい。そして最終的に、陽性の人がピロリ菌を除菌するかどうかは、メリットとデメリットを主治医から聞いて納得した上で決めることになります。また、もうひとつ。一度ピロリ菌に感染すると、除菌しても、胃がんのリスクは完全になくなるわけではありません。定期的に検査をすることが必要です。
     
         最後に一言、今後の展望についておねがいします。
    鈴木 日本から、胃がんで亡くなる方を一人でも多く減らしたい。またこれをきっかけにもっと自分の健康に注意を払い、健康で長生きできる健康長寿社会を実現したいですね。
         ありがとうございました。
    ピロリ菌と胃がんの関係が気になる方は……
    鈴木先生による「胃がんを知る」もあわせてご覧ください。

    ソーシャルメディアをフォローして、胃がんの情報をゲット!!

    alt
    alt