過敏性腸症候群
下痢や便秘をくり返す過敏性腸症候群
大腸がんや潰瘍性大腸炎などの身体的な病気は存在しないのに、腹痛、腹部不快感、便通異常、残便感などの症状が存在する病気のことを言います。
一般的検査では異常所見はみられません。
「仕事中や会議中に急にお腹が痛くなる」
「通勤・通学の電車の中で腹部に不快感を感じて途中下車をしてしまう」
「便秘や下痢などの便通異常が慢性化している」
などのような症状があると疑います。
同時に消化管以外の症状、たとえば背部痛、腰痛、易疲労感、頭重感、めまい、倦怠感、不眠、不安感、抑うつ感などの症状を伴うこともあります。
日本人では思春期から50歳代に多くみられ、人口の20%の患者さんがいるといわれるほどポピュラーな病気です。
自律神経の乱れから腸がけいれん
腸の運動は自律神経によってコントロールされています。
口から入った食物は、胃を経て小腸、大腸と通過しながら消化・吸収されます。
そうして後に残ったものが、腸の運動によって直腸に運ばれると便意が起こるのですが、この間に自律神経のバランスが乱れることがあると、腸にけいれんが起きて排便のリズムが崩れ、腹痛や下痢、便秘といった過敏性腸症候群の症状がもたらされるのです。
自律神経のバランスを乱す主な原因は、緊張、不安といった精神的なストレスです。
過敏性腸症候群は、症状によって次の3つのタイプに大きくわけられます。
男性は下痢型、女性は便秘型が多くみられます。
下痢型
激しい腹痛があり、下痢便や軟便が1日に何回も出ます。
起床直後、朝食の後など自宅にいるときばかりでなく、通勤電車に乗っているとき、外出先などでも便意が起こるために、いつも公共トイレの場所が気になってしまいます。
男性に多いタイプといわれます。
便秘型
腹痛があり、トイレでの排便量は少なく、それもウサギのふんのようなコロコロした小さな便が便器に浮かびます。女性に多いタイプといわれます。
下痢・便秘交替型
下痢と便秘を数日ずつ交互にくり返すタイプで、全体ではこのタイプが最も多いといわれます。
いずれのタイプも、排便すると症状が改善すること、ストレスを感じると症状が悪化することが特徴的です。
生活指導
- ストレスをさける
- 好きな趣味に興じる時間をもつ
- 毎日ウォーキングのような軽い運動で汗をかき気分をすっきりさせる
- 規則正しい生活をおくる
- 夜更かしをせず、十分な睡眠・休養をとる
- 便意がなくても毎朝決まった時間にトイレに行く習慣をつける
- 食事をとる時間帯は3食ともできるだけ一定にする
食事療法
下痢型
高脂肪食、アルコール、カフェイン、香辛料、冷たい飲み物、発酵食品など、腸粘膜を刺激し下痢を悪化させる食品を避けます。
消化に悪い食品を避けます。
便秘型
アルコール、香辛料、炭酸飲料、脂肪分の多い食品など、刺激物を避けます。
便秘解消のために野菜や海藻類など食物繊維の多い食品を積極的にとり、ビタミンB、ビタミンCをとります。
下痢・便秘交替型
その時の腸の症状に合わせて食べるものを選びます。