脂質異常症は、なぜ恐いの?
●脂質異常症は動脈硬化の最大の危険因子

脂質異常症は、それ自体に自覚症状もなく放置されがちですが、
確実に血管の弾力性が低下し、動脈硬化を進行させ、
心臓の血管が細くなったり詰まったりする「狭心症・心筋梗塞」、
脳梗塞や脳出血などの「脳卒中」、
脚の血管が詰まる「閉塞性動脈硬化症」
などの重大な疾患のリスクが高まります。

特に家族性の高コレステロール血症の人は、
心筋梗塞や狭心症といった冠動脈疾患の発症リスクが、
正常なコレステロール値の人の約20倍にのぼるといわれています。
また、
中性脂肪が高い(500mg/dl以上が目安)と
急性膵炎
にもなりやすくなります。
動脈硬化性疾患は総死亡の約22%を占め、
発症すると日常生活の質が低下する可能性もある重篤な病気です。
加齢、
性別(男性)、
冠動脈疾患の家族歴、
糖尿病、
高血圧、
喫煙、
肥満、
脂質異常症などが動脈硬化性疾患の危険因子ですが、
脂質異常症はこれらの危険因子のなかでも
最大の危険因子である
ことがさまざまな研究で示されています。

特にLDLコレステロールは、血管壁に侵入しやすいという性質を持ち、
動脈の壁に脂肪の塊(プラーク)を形成する要因とされており、
血管壁にくっついたプラークにより血管を狭めることで、重篤な病気を引き起こすリスクが
高くなります。
プラークが形成された部位は、血管壁の厚みが増すことでしなやかさが損なわれ、
硬くなることから「動脈硬化」とよばれます。
動脈硬化を起こした血管は心臓から送られた血液の圧力(血圧)を
柔軟に受け止められないため、血管破裂を招く可能性があります。
または血管内膜が傷を負い、それを修復しようと血小板が固まる原因となります。
これが「血栓」とよばれる状態です。
血栓は血流を防ぎ、その部位の組織や臓器を壊死させます。
血栓が心臓に栄養を送る血管(冠動脈)にできると「心筋梗塞」、
脳動脈にできると「脳梗塞」となります。
一方、HDL-コレステロールが少ないと、余分なコレステロールが
十分に回収されず、たまったままになります。
中性脂肪は、それ自体は動脈硬化の直接の原因にはなりませんが、中性脂肪が増えすぎると、
LDL-コレステロールが増え、HDL-コレステロールが減りやすくなることがわかっています。
動脈硬化に直接悪影響を及ぼすのはLDL-コレステロールですが、HDL-コレステロールと
中性脂肪の異常も間接的に動脈硬化を促進します。
脂質異常症を治療しないとどうなる?

どのくらいの数値になったら病院で相談した方がいいの?
では、どのくらいの数値になったら病院に行くべきなのでしょうか?LDLが基準値の140mg/dLを超えたら病院を受診するのもいいですが、
特に要注意なのは
LDLが160mg/dLを超えてからです。

なぜ、LDLコレステロールは160mg/dLから要注意なのかというと、
心筋梗塞などの心臓病リスクが
・LDLが160を超えると2.6倍
・LDLが180を超えると5.7倍
になったという日本人対象の研究結果が出ているからです。
また、
・中性脂肪が300を超えると心臓病のリスクが2倍
・中性脂肪が500を超えると急性すい炎
のリスクが上昇
になったという研究結果があります。