高血圧は、なぜ恐いの?
血圧とは、血液が血管を押す圧力のことで、水道の水圧と同じです。
健康な血管は柔軟性があって柔らかいのですが、
血圧が高くなると強い圧力で押された血液が血管を傷つけます。
そして、高血圧にさらされ続けた血管は硬くなります。
例えば柔らかいゴムも長期に渡って圧力がかかると硬化します。
そして硬くなった血管はもろくなります。
この状態を動脈硬化と言います。
動脈硬化がアテロームをつくる
動脈硬化によって血管が傷つくと、そこにコレステロールが溜まっていきます。
そのコレステロールは「ぐじゅぐじゅ」してきて、お粥(かゆ)状になります。
この状態を粥状(じゅくじょう、アテローム)といいます。
アテロームは血管の内側を狭くするので、血圧はさらに上がります。
ホースの口を絞ると水の勢いが増すのと同じ原理です。
そしてアテロームができると血小板が付着して、さらに血管の内側を狭めます。
動脈硬化で内側が狭くなったところに、
血栓(血液のかたまり)ができて
血管がつまり、
血液が流れなくなります。
血圧が高い状態が続くと動脈の壁に負担がかかって確実に動脈硬化を進行させ、
血液が流れなくなってしまい、負担のかかる血管や臓器に
さまざまな合併症を起こします。
狭心症や心筋梗塞などの心疾患
高血圧が続くと
心臓の壁が厚くなる心肥大
心臓のポンプ機能が低下する心不全に陥りやすくなります。
動脈硬化などで冠動脈が狭くなる狭心症、
完全に閉塞して心筋が壊死する心筋梗塞などがあります。
狭心症
心臓を取り巻く冠動脈が狭くなり、心臓を動かすための血流が不足する「心筋虚血」が起こります。
突然、胸を締めつけられるような痛みや圧迫感を感じますが、
この症状は数分、長くても15分程度でおさまります。
心筋梗塞
冠動脈が完全にふさがって血流が途絶えますので、その部分の心筋は壊死します。
激しい胸の痛み、呼吸困難、冷や汗、吐き気などの症状があり、長時間続きます。
高血圧が続くと血液の圧力の影響で血管がもろく破れやすくなります。
動脈が硬く狭くなる動脈硬化も起きやすくなり、
その結果、脳に酸素や栄養が十分に供給されず、脳に障害が出ることがあります。
脳血管が破裂する脳出血や、
脳血管がつまる脳梗塞が起こります。
腎不全
高血圧が慢性化すると腎臓の濾過機能が低下し、腎障害を合併しやすくなります。
同時に腎障害が強いほど血圧は高くなり、この2つは互いに悪循環を起こすようになります。
腎臓の濾過機能が不具合を起こし、排泄する機能が30%以下に低下した状態になると、腎不全と呼ばれます。
腎臓の機能は一度失われると回復することが難しく、慢性腎不全に移行する可能性が高くなります。
高血圧性網膜症
高血圧の人が眼底検査を受けると、網膜の出血、白い斑点、むくみなどが見られることがあります。
これが高血圧性網膜症です。
自覚症状はほとんどなく、検査を受けて初めて分かるということが多いのが特徴です。
放置すると血管が破れて出血が目の硝子体に広がり、網膜剥離が引き起こされることもあります。
そのことで極端に視力が落ちるケースも生じます。
そのほか、大動脈が裂ける大動脈解離などのリスクも高くなります。
高血圧には自覚症状がほとんどなく、健診などで高血圧を指摘されても、
放置する人が少なくありません。
自覚症状がなくても適切な治療をすることが大切です。
高血圧を治療せずに放置していると、血管の内側に常に高い圧力がかかることになります。
血管がダメージを受けて、また血管の壁はその圧力に対応して次第に厚く硬く変化し、
動脈硬化が進行していきます。
高血圧が危険なのは、
この動脈硬化を引き起こすことです。
高血圧を治療する目的には、動脈硬化によって起こる
脳の病気、心臓の病気、腎臓の病気などの合併症
を防ぐことにあります。