やましたクリニック
2024.02.14
出席者 大村 浦 中村 山下
アナフィラキシーショックとは、アレルギー反応によって血圧が低下し、意識障害や脱力をきたす重篤な状態です。アナフィラキシーの症状が急速に悪化し、生命に関わる危険性があります。
アナフィラキシーショックの原因としては、食物や薬剤、ハチなどの昆虫の毒などが挙げられます。
アナフィラキシーショックの症状には、次のようなものがあります。
- 皮膚症状(全身の発疹、かゆみ、紅潮)
- 粘膜症状(唇や舌などの腫れ)
- 呼吸器症状(呼吸困難、気道狭窄、ぜん鳴)
- 循環器症状(血圧低下、意識障害)
アナフィラキシーショックの救急プロトコールは、迅速な診断と治療が救命の鍵となります。
アナフィラキシーショックの救急プロトコール
は次のとおりです。
- 症状が現れたら、すぐに救急車を呼びます。
- その場であお向けに寝かせ、顔を横に向けます。
- 足を高くします。
- 患者本人がアドレナリン自己注射を持っている場合は、自己注射を行います。
- 意識がない、症状が出ているのが乳児など、患者本人が自己注射できない場合は、家族など周りの方が注射を行ってください。
- 呼びかけに反応がなく、普段通りの呼吸がなければただちにAEDで心肺蘇生を開始します。
- エピペンを使用した場合は、必ず救急車で医療機関へ搬送します。
アナフィラキシーショックの治療には、
エピネフリンの筋肉注射が第一選択となります
。症状が軽い場合は、
抗アレルギー薬や気管支拡張薬
などの治療を行います。
表9 - 2 アナフィラキシーの重症度分類
重症例(アナフィラキシー)の治療(ステージⅢまたはⅣ,グレード3または2)
1)初期治療
初期対応は、まずバイタルサインを確認すると同時に、周囲に助けを呼び、人を集める。
アナフィラキシーを発症した際には、体位変換を契機として急変する可能があるため、
急に座らせることや立ち上がらせることを避けて、患者を仰臥位にして下肢を挙上させる体位をとる。
高流量(6~8L/分)の酸素投与を開始するとともに
直ちにアドレナリン(0.01mg/kg)を大腿の前外側に筋肉注射する(図9-1)。
必要に応じて10~15分ごとに再投与する。
また循環血液量を保つために、太めの血管内留置カテーテルで静脈ルートを確保し、生理食塩水や細胞外液などを急速(最初の5~10分間での投与速度は成人では5~10mL/kg、小児では10mL/kg)に投与する。
治療を行うにあたり、医療従事者はラテックスフリーの手袋を使用して、酸素マスクやアンビューバッグ、尿道カテーテルなど、皮膚や粘膜に触れる物はすべてラテックスフリーで対応する。
(1)アドレナリンの投与(表9-3)
アドレナリンの投与にあたっては、表9-2に示すように、重症度・症状を確認する。
アドレナリンは製剤として、ボスミン®注1mg、アドレナリン注0.1%シリンジ「テルモ」、エピペン®注射薬0.15mg/0.3mgが使用できる。
アドレナリンは筋肉内注射で投与する。
蘇生などの緊急時には、アドレナリンとして、通常、成人1回0.25mgを超えない量を生理食塩液などで希釈し、できるだけゆっくりと静注する。
(2)アドレナリン以外の薬物治療
アナフィラキシーでは、アドレナリンが第1選択薬であるが、追加治療として抗ヒスタミン薬の静脈内投与(クロルフェニラミンなど)、気管支拡張薬の吸入を検討する。2相性反応の予防を目的としてステロイド薬(ヒドロコルチゾンやメチルプレドニゾロン)が使用されることがある。
2)初期治療に反応が乏しい場合
アナフィラキシーの初期治療を行っても反応が乏しい場合には、救命救急医や麻酔科医などからなる院内の蘇生専門チームによる対応が望ましい。
ショック症状が改善しなければ、アドレナリンの静脈内投与や昇圧薬などが必要となることもある。
また、喉頭浮腫があり、アドレナリン投与によって気道狭窄が改善しない場合は気管挿管、さらに気管切開や穿刺が必要な場合もある。
3.軽症・中等症例の治療(ステージⅠまたはⅡ,グレード1または2)
接触した部位に生じた蕁麻疹の場合(ステージⅠ)は、通常は原因となったラテックス製品との接触を断つことで症状は1時間以内に自然に消退する。接触した部位を水でよく洗浄し、症状を早期に消退させるために抗ヒスタミン薬を内服させる。
接触部位を超えて蕁麻疹が全身に拡大する場合(ステージⅡ)は、抗ヒスタミン薬を内服させて、呼吸器症状や消化器症状など、症状の拡大や進行がないかどうかを繰り返し観察する必要がある。
4.ラテックスアレルギーに対応するために医療機関で準備すべき医療備品
治療や検査に必要な医療機器、そして救急カートなどの緊急物品は、すべてラテックスフリーで揃えておくことが望ましい(表9-4)。