大腸ポリープは、将来がん化する可能性の高い腺腫(せんしゅ)が多いため切除の対象となります。
EMRは、「Endoscopic Mucosal Resection」の略で、内視鏡的粘膜切除術のことを言います。
病変が平らな表面型などのがんや腺腫)を切除するときに行われる方法です。茎のない平らなポリープはスネア(輪状のワイヤー)が掛かりにくいので、大腸ポリープのある場所の大腸の粘膜下層へ生理食塩水などを注入し、人工的な隆起を形成し切除しやすいように持ち上げてから、スネア(輪状のワイヤー)を掛け、高周波電流を流して焼き切ります。
適応
- 腺腫性ポリープ
- 転移病巣がないと推定される早期癌
早期癌の対象
大腸:深達度sm1までの分化型癌
sm1は、腺管ないし数腺管の癌組織が粘膜筋板を貫いて粘膜下層に浸潤している場合
*分化型癌とは、成熟した大人な細胞が癌細胞になってしまったものです。体における成長の余地が大人になるほど、少なくゆっくりになるように、分化型の癌細胞もゆっくりと成長します。
EMRの方法
病変の存在を内視鏡下に確認し、病変の下層へ局所注射用の針を刺します。
粘膜下層へ生理食塩水を注入し、ポリープを持ち上げます。
隆起させるのは粘膜下層の下にある固有筋層を傷つけないためです。
スネア(輪状のワイヤー)をポリープにかぶせます
ワイヤーの輪を徐々に縮めて、取り残しのないよう辺縁の境界部分に電気メスの刃をあわせて
いき、電気メスをしっかり絞めて、通電を行い切除となります。この時痛みは感じません。
ワイヤーの輪を徐々に縮めて、病変を切り取ります
ポリープ切除完了です。切り離した病変を回収します。
処置後の注意点
1.検査後安静にする必要がありますので、原則として2泊3日の入院経過観察は必要。
2.術後24時間は床上安静を原則とし、歩行はトイレ・洗面時のみ可能になります。
3.食事は検査当日は絶食、翌日から摂取可能。
4.アルコールや刺激物の摂取は1ヶ月間は禁止。
5.力仕事や激しい運動、旅行は2週間後から。
6.シャワーは翌日から開始。入浴は1週間後から可能になります。
EMRは開腹や全身麻酔の必要がなく、手術時間は1時間程度であることから、患者の侵襲は低く、悪性腫瘍・ポリープ切除における根治性も損なわれないため、術後まもなく通常の生活に戻れます。
EMRの合併症
EMRにおける偶発症の発症率は0.01%と非常に低いため、安全かつ安楽に悪性腫瘍・ポリープを切除することができますが、EMRで切除した部分が人工的な胃潰瘍になることで、術後2~3日以内に稀に出血や穿孔になる場合があります。その際には、腹痛・嘔気・嘔吐などの腹部症状や血便などの症状が現れます。