糖尿病は放置してはいけない
血糖値の高い状態が続くと、全身の血管がもろく、そして詰まりやすくなります。
そのため血液が適切に供給されなくなり、全身のさまざまな臓器に障害がおこります。
心筋梗塞や脳梗塞といった致命的な病気
のリスクが大きく高まります。
また、目や腎臓、足の血管の病気
を引き起こすこともあります。
糖尿病は初期症状がほとんどないため、放置されがちです。
自覚症状がないからといって、放置するのは危険です.
★糖尿病の三大合併症
*神経障害
*網膜症
*腎症
は放置すると重大な障害を招くことがあります。
糖尿病の放置が引き起こす合併症:
- 神経障害:糖尿病性神経症は、末梢神経の障害で、足の痺れや痛み、感覚の鈍さなど、
- さまざまな症状が現れます。重症化すると足の壊疽や切断につながることもあります.
- 網膜症:糖尿病網膜症は、目の網膜の血管が障害される病気で、
- 視力低下や失明のリスクを高くします.
- 腎症:糖尿病性腎症は、腎臓の機能が低下する病気で、
- 人工透析や腎移植が必要になることもあります.
- 心臓病や脳梗塞:糖尿病は動脈硬化を進行させ、心筋梗塞や脳梗塞のリスクを高くします.
- その他: 糖尿病の放置は、感染症にかかりやすくしたり、皮膚病などを悪化させたり、
- 寿命を縮めるリスクを高めることもあります.
糖尿病合併症には、
細い血管におこる合併症(細小血管障害)と、
太い血管におこる合併症(大血管障害)があります。
また合併症には慢性合併症のほかに、
インスリン作用不足により急激におこる急性合併症もあります。
細小血管障害

高血糖の状態が長い期間にわたって続くと、体の細い血管が障害されて血流が悪くなり、
とくに細い血管が集中している場所に合併症が起こります。
眼、腎臓、神経系で合併しやすく網膜症、腎症、神経障害があります。
★網膜症
「眼」には、光を通すように透明な硝子体とフィルムの役割をする
網膜という部分があります。
網膜には、目に酸素を運ぶための細い血管が縦横に走っていますが、
血中のブドウ糖が多くなると、網膜の血管に瘤(こぶ)ができたり、
詰まったりすることで、 血液の流れが悪くなります。
その結果、網膜が酸素欠乏状態となるため血管がもろくなり、
血管壁から血液中の成分が漏れ出したり、
血管が破れやすくなったりします。(硝子体出血)
さらに進行すると、広い範囲で血管が詰まったり、 本来血管がないところに
血管が生えてきてしまったりすることで網膜症が起こります。
網膜剥離を起こすこともあります(牽引性網膜剥離)。
網膜症は初期の段階の単純網膜症、やや進行した増殖前網膜症、
そして増殖網膜症へと進んでいきます。
放置しておくと視力低下や失明につながりますので定期的な検査や治療が必要です。
★腎症
私たちは血液中の老廃物を、腎臓で濾過して尿から排泄します。
長期間高血糖が続くと腎臓の糸球体の濾過機能が障害され、
本来尿中に排出されない蛋白質まで排出されるようになってしまいます。
また「尿細管」の機能も障害されることが知られており、水分が過剰に排出されて
頻尿、脱水になってしまうことも知られています。
この状態を腎症とよんでいます。
腎機能の低下が進行するとやがて腎不全となり、末期には人工透析が必要になります。。
★神経障害
高血糖状態を放置しておくと、
細い血管が障害されて血流が悪くなり、神経細胞への血液の供給が途絶えてしまうため、
自律神経にも障害が起こります。
これを神経障害とよんでいます。
しびれ感や感覚の異常がおこったり、痛みを感じにくくなったりします。
また内臓の神経が障害されると、
下痢や便秘、立ちくらみ、排尿障害、勃起障害などがおこったりします。
痛みを感じにくくなっているため、ちょっとした足の傷や、ヤケドに気づかず壊疽(えそ)
になって足を切断することもあります。


★大血管障害
高血糖の状態が長く続くと、細い血管だけでなく太い血管も障害されます。
血管の内側にある細胞が障害され、血管が徐々に厚く、また硬くなります。
そして進行すると血管が詰まってその先の臓器に血液を供給できなくなり障害がおこります。
これを大血管障害、あるいは動脈硬化とよんでいます。
大血管障害は糖尿病だけでなく、高血圧症や高コレステロール血症、喫煙
などによってもおこります。
大血管障害には脳梗塞、心筋梗塞、末梢動脈疾患(PAD)などがあります。
★脳梗塞
脳にも細い血管が多数あり、
糖尿病により血管の壁が傷つくと脳の血管が詰まって「脳梗塞」になります。
脳は様々な機能を司りますので、詰まった場所により、
突然に意識障害、手足のまひやしびれ、めまいが起きる、ふらつく、
認知機能がおかしくなる、人格が変化するなど様々な影響が起こります。


★狭心症・心筋梗塞
心臓の血管が細くなると、
心臓に届く血液の量が減り、体を動かすときに胸の痛みがおこります。
この状態を狭心症とよんでいます。
また心臓の血管が詰まり、血流が途絶えた状態を心筋梗塞とよんでいます。


★末梢動脈疾患(PAD)
足の太い血管が動脈硬化で細くなったり詰まったりして、
足の血流が低下することでおこる病気を末梢動脈疾患とよんでいます。
歩く際に足のしびれや痛みを感じたり、足の先にできた傷が治りにくくなったりします。
場合によっては潰瘍や壊疽ができることもあり、
ひどい場合には足の手術が必要になることがあります。
★歯周病
血糖値が高いと細菌が繁殖しやすくなるため、歯周病が悪化することが知られています。
歯周病の治療だけでは完治が難しいことがあり、糖尿病の管理も同時に行う必要があります。
★感染症
歯周病以外にも、糖尿病では
肺炎や尿路感染症、皮膚感染症などの感染症を合併することがしばしばあります。
抗菌薬による治療と一緒に血糖のコントロールを行います。
★認知症
最近、高血糖の状態が続くと認知機能が低下することがわかり、
糖尿病と認知症の関連が注目されています。
認知症予防のためには適度な運動と糖尿病の治療が大切です。
★糖尿病ケトアシドーシス
何らかの理由でインスリンが欠乏してしまうと、体の中の糖をうまく利用できなくなり、
かわりに脂肪をエネルギー源として利用するようになります。
脂肪を燃やしてエネルギーとして使う際に、ケトン体という酸性の物質が作られます。
このケトン体がたくさん作られ体内で蓄積すると
意識が悪くなり、昏睡状態になることもあります。
これを糖尿病ケトアシドーシスとよんでいます。
1型糖尿病の患者さんにおこることが多い急性合併症です。
★高血糖高浸透圧症候群
感染や脱水によりインスリンの作用が高度に低下すると、
著しい高血糖により血液の浸透圧が高くなり昏睡状態になることがあります。
これを高血糖高浸透圧症候群とよんでいます。
高齢の糖尿病患者さんにおこることが多い急性合併症です。