ピロリ菌が原因でなる病気
胃の粘膜にすみつくピロリ菌ですが、消化器疾患以外にも血液疾患や皮膚疾患など、
様々な疾患の発症に関与していると考えられています。
リスクが高まる疾患名 | 概要 |
胃潰瘍 | 胃壁の粘膜が深く傷ついている状態。症状は腹痛や吐き気、腹部満腹感など。 |
十二指腸潰瘍 | 十二指腸壁が深く傷ついている状態。症状は空腹時のみぞおちや背中の痛みや吐き気など。 |
胃がん | 胃の粘膜から発生するがん。症状は早期にはありません。 |
胃MALTリンパ腫 | 胃の粘膜にあるリンパ組織(MALT) から発生する、ゆっくり発育する悪性度が低い腫瘍。 |
突発性血小板減少性紫斑病 | 血小板数が減少し、出血しやすくなる、あるいは血が止まりにくくなる疾患。 |
鉄欠乏性貧血 | 血液中の鉄分が不足して起こる貧血。だるい、疲れやすいといった症状も招く。 |
慢性じんましん | 強い痒みとみみずばれが1ヶ月以上続く疾患。 |
ピロリ菌が引き起こす病気
■ 胃潰瘍、十二指腸潰瘍
胃潰瘍・十二指腸潰瘍は、ピロリ菌感染により胃粘液が酸の影響をうけて弱まり、胃や十二指
腸の粘膜が傷ついて深くえぐられた状態のことです。
潰瘍患者のピロリ菌感染率は90%以上。
昔も今も潰瘍は一度よくなっても半数以上が再発し、薬をなかなかやめることができない
病気。
しかし、ピロリ菌除菌で胃潰瘍、十二指腸潰瘍ともに再発率が明らかに減少しました。
ピロリ菌がどのように潰瘍を起こすかはまだ完全に解明されていませんが、
ピロリ菌に感染していると炎症が起きやすく、潰瘍は膿んだ状態になりますが、ピロリ菌が
いなくなると潰瘍は膿のないきれいな状態になり、きれいに治ることが多いです。
■ 胃がん
ピロリ菌感染者の多い日本では、世界的に見ても胃がん患者が多いようです。
胃がんは、胃粘膜内の細胞が、何らかの原因でがん細胞になり、増殖を繰り返す状態です。
胃がんの原因は喫煙や食生活などの生活習慣や遺伝の影響があると言われていますが、
ピロリ菌感染が発生のリスクを高めるという報告があります。
早期胃がんでピロリ菌が見つかった場合は、内視鏡的治療後に除菌治療が推奨されます。
1994年、世界保健機構(WHO)は疫学的調査から、ピロリ菌を確実な発がん物質と
認定しました。
除菌により胃がんの発生率が1/3に抑制され、ピロリ菌除菌に胃がん予防効果がある
と証明されています。
■萎縮性胃炎
粘膜層が非常に薄くなり胃炎と同様の症状を起こす萎縮性胃炎の大部分も、
ピロリ菌感染が原因。
萎縮性胃炎になった場合、その後の胃がん予防のためにピロリ菌除菌治療が薦められます。
ピロリ菌に感染するとまず急性胃炎が起き、長い年月をかけて萎縮性胃炎になり、
胃がんになる危険性が4~10倍に増加すると考えられています。
これまで萎縮性胃炎は加齢現象といわれてきましたが、ピロリ菌感染者のみが萎縮性胃炎
になることと、除菌でそのリスクが改善することがわかっています。
ただし萎縮性胃炎以外のいわゆる慢性胃炎と呼ばれるものの原因には、ピロリ菌感染以外に
加齢、塩分の過剰摂取、アルコール、タバコ、野菜の摂取不足など多くのものがあるので、
ピロリ菌除菌をしたからといって油断してはいけません。
その他の病気について
その他の病気として、
胃MALTリンパ腫
免疫性(特発性)血小板減少性(ITP)
早期胃がんの内視鏡的治療を受けた方
ディスペプシア症状(みぞおち辺りの痛み・焼ける感じ、食後の胃もたれ、食事中に胃が充満した感じとなり、最後まで食事を摂取できない状態)
がある方は、ピロリ菌の除菌治療が勧められてます。
かかりつけの病院で相談しましょう。
日本ヘリコバクター学会は、ピロリ菌感染によって起こりうる胃がんリスクを軽減するために
ガイドラインを提示しています。
・内視鏡検査においてヘリコバクター・ピロリ感染が原因による胃炎と診断された
・胃潰瘍や十二指腸潰瘍が認められた
・胃MALTリンパ腫と診断された
・特発性血小板減少性紫斑病の場合
・早期胃がんを内視鏡で切除した場合
上記の5項目に当てはまる場合には、保険適用でピロリ菌除去治療を受けられます。